クリニックや医院は、ビルオーナーにとって魅力的なテナントなのではないでしょうか?長期契約が期待でき、地域の信頼を集める施設として物件の価値向上にも貢献します。しかし、医療施設には一般的なオフィスとは異なる特殊な要件があります。この記事では、クリニックや医院を誘致したいビルオーナーが知っておくべき物件スペックについて解説します。
目次
クリニック・医院開業の物件に必要な基本的スペック
床面積
一般的な診療所:80~150㎡程度(約25~45坪)
専門クリニック:150~330㎡程度(約45~100坪)
※診療科目や規模により異なります
天井高
最低2,500mm以上
※診療科目や診療内容により異なります
床荷重
一般的なオフィスビル:300~500kg/㎡
医療機器設置エリア:800~1,000kg/㎡ 以上が必要な場合もある
設備関連の重要ポイント
電気設備
電気容量:一般オフィスの2~3倍(60~100VA/㎡程度)
非常用電源:停電時の医療機器稼働のため必須
給排水設備
給水:診察室、処置室、手洗い場などに必要
排水:滅菌処理や特殊な配管が必要な場合あり
給湯設備:手洗いや機器洗浄用に必要
空調設備
24時間稼働可能な個別空調システムが望ましい
清浄度の高い空調が必要な診療科目もある
防音対策
診察室や処置室の遮音性能:DR-35以上
床衝撃音対策:L値-45以下が望ましい
法規制への対応
建築基準法
用途地域の確認:医療施設が許可される地域かどうか
防火区域:診療所の床面積が300㎡を超える場合、特定防火設備が必要
医療法
診療科目に応じた必要諸室の確保
待合室の十分なスペース確保(患者数に応じた面積)
消防法
スプリンクラー設置:床面積や診療科目により要件が異なる
防火管理者の選任:収容人員に応じて必要
消防法・防火管理者についてはこちらもチェック↓
「クリニック・医院開業時に必須!消防法と防火管理者について解説」https://ishinofudosandesk.com/journal/business_start_up/article-35/
クリニック・医院特融の要望
待合室スペース
1診療科目あたり15~20㎡程度
車椅子スペースの確保
診察室の配置
プライバシーに配慮したレイアウト
動線に考慮した効率的な配置
医療機器の配置スペース
X線室:15~20㎡程度
CT室:30~40㎡程度
MRI室:40~50㎡程度(電磁シールド工事が必要)
バリアフリー対応
段差のない設計
車いす対応のトイレの設置
手すりの設置
改修工事の可能性と注意点
構造的な制約
耐震性能の確認と必要に応じた補強
設備配管のための天井裏・床下スペースの確保
工事期間と騒音対策
一般的な改修工事期間:2~3ヶ月
他テナントへの配慮:防音パネルの設置、夜間工事の検討
費用負担の考え方
一般的な内装工事:テナント負担
構造に関わる工事:オーナー負担
設備補強:協議により決定(長期契約と引き換えにオーナー負担も検討)
まとめ
クリニックや医院は、地域に根ざした安定的なテナントとして、物件の価値向上に大きく貢献します。クリニック・医院に適切なスペックを備えた物件であれば、医療テナントを誘致することも可能です。医療ニーズの高まる現代社会において、クリニックや医院の誘致はオーナーにとってもビジネスチャンスとなるでしょう。