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事業計画とは
事業計画とは、ビジネスを始める際や拡大する際に、その目標や戦略、必要な資源、予測される成果などを体系的にまとめた文書のことです。クリニック開業においては、医療サービスの提供という社会的使命と、継続的な経営を両立させるための重要な設計図となります。
事業計画書は単なる融資申請のための書類ではなく、開業医自身が自らの医療理念を実現するための道標であり、医院経営の指針となるものです。
綿密に作成された事業計画書は、以下のようなメリットをもたらします。
- 経営の羅針盤:開業後の意思決定や経営判断の基準となります
- 関係者との共通認識:スタッフや金融機関、取引先との間で目標や方向性を共有できます
- リスク管理のツール:想定されるリスクとその対策を事前に検討できます
- 成果測定の基準:開業後の実績を計画と比較し、改善点を見出せます
特に医療機関の場合、一般的なビジネスとは異なる医療法などの規制や診療報酬制度の影響を受けるため、医療特有の要素を織り込んだ事業計画が求められます。
事業計画の主な内容
クリニック開業に必要な事業計画には、以下の項目を盛り込むことが重要です。金融機関や行政への提出用と、自身の経営指針用では若干内容が異なりますが、基本的な構成要素は共通しています。
(1)基本情報
- クリニック名、診療科目(標榜科目、専門領域)
- 開業予定地(住所、物件概要)
- 開業予定日(スケジュール)
- 事業主の経歴・資格(専門医資格、勤務実績、研究業績など)
- 開業の動機・理念(なぜその地域で、その診療科で開業するのか)
(2)市場分析・ターゲット層
- 開業エリアの人口動態(総人口、年齢構成、将来予測)
- 競合状況(同一診療科の医療機関数、特色、評判)
- 想定する患者層(高齢者向け、小に向け、女性向け、特定疾患専門など)
- 他院との差別化ポイント(専門性、設備、診療時間、アクセスなど)
- 地域医療における自院の位置づけ(地域連携の方針)
(3)診療内容・提供サービス
- 診療時間・診療日(休診日、時間外対応の有無)
- 診療方針・提供する医療サービス(得意とする治療、予防医療の取り組みなど)
- 最新設備・特別な治療の導入計画
- 自由診療の導入予定(美容医療、予防医療、自費診療メニューなど)
- オンライン診療や訪問診療の実施計画
(4)資金計画
- 開業資金の内訳
・物件取得費/賃借料(敷金・保証金を含む)
・内装工事費(設計費、工事費、設備費)
・医療機器購入費(主要機器のリスト化)
・備品・消耗品(事務機器、初期在庫など)
・開業前諸経費(人件費、広告宣伝費、開業前研修費など) - 資金調達方法
・自己資金(預貯金、家族からの援助など)
・融資(金融機関名、借入予定額、返済計画)
・助成金・補助金(創業支援制度の活用) - 返済計画(月々の返済額と収支のバランス)
(5)収支計画
- 初年度~5年目までの売上予測(月別・年別)
- 診療報酬別の収入予測(保険診療、自由診療の内訳)
- 固定費の算出(人件費、家賃、リース料、保険料など)
- 変動費の算出(医薬品費、医療材料費、水道光熱費など)
- 収益の損益分岐点分析
- キャッシュフロー予測(資金繰り計画)
(6)運営体制・スタッフ計画
- 組織体制(役職・責任体制)
- 必要なスタッフの人数と役割(医師、看護師、医療事務、受付など)
- 採用計画(採用時期、採用方法、給与体系)
- 教育・研修方針(接遇研修、専門スキル研修など)
- 労務管理方針(勤務シフト、福利厚生など)
(7)マーケティング・集患戦略
- 開業前の広告・宣伝計画(タイミングと予算)
- 広報媒体の選定(クリニックホームページ、SNS、医療ポータルサイト、チラシなど)
- 地域住民との関係構築施策(健康セミナー、無料相談会など)
- 医療連携先の開拓計画(紹介・逆紹介の仕組み)
- 口コミやリピーターを増やす施策(患者満足度向上策)
事業計画を作成する際のポイント
事業計画を作成する際には、以下のポイントを意識することで、より実効性の高い計画を策定できます。
具体的な数値を示す
感覚的な表現ではなく、可能な限り具体的な数値で表現しましょう。
例えば「多くの患者が来院する」ではなく「1日平均30人の患者数を見込む」といった具体的な数値目標を設定します。
➡数値の根拠を示すことで、金融機関や第三者への説得力が高まります。
現実的な計画を立てる
過度に楽観的な収益計画は避け、保守的な見積もりを心がけましょう。
特に開業初年度は想定より患者数が少ないことが多いため、余裕を持った資金計画が重要です。
リスク要因(診療報酬改定、競合出現、人口減少など)も明記し、対応策を検討しておきましょう。
専門家の意見を取り入れる
クリニック開業支援の実績がある税理士や会計士のアドバイスを受けることで、計画の精度が高まります。
金融機関の担当者、医療経営コンサルタント、医療機器メーカーなど、様々な専門家の知見を活用しましょう。
先輩開業医の経験談も貴重な参考情報となります。
定期的な見直しを行う
事業計画は一度作成して終わりではなく、状況の変化に応じて定期的に見直すことが重要です。
特に物件選定の進展や融資条件の変更などに合わせて、柔軟に修正していきましょう。
開業後も実績との差異を分析し、計画の精度を高めていくことが経営安定につながります。
まとめ
事業計画は単なる融資のための書類ではなく、自身の医療理念を形にし、安定したクリニック経営を実現するための重要なロードマップです。丁寧に作成し、専門家の助言も取り入れながら、理想のクリニック開業を実現させましょう。
最後に、開業準備は早めに始めることをお勧めします。特に好条件の物件は競争率が高いため、開業の1~2年前から情報収集を始め、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。
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