医院・クリニックを開業する際、普段はあまり使わない用語が多く出てきます。この記事では、医院・クリニック開業時に使用される様々な用語を簡単に解説していきます。
目次
物件関連用語
医療モール
複数の診療科や医療関連サービスが集まった施設のこと。患者の利便性が高く、集患にも有利です。
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スケルトン
内装や設備がない状態の物件。自由にレイアウトを決められる反面、内装工事のコストがかかります。
居抜き
前テナントの内装や設備がそのまま残っている物件。初期投資を抑えられる可能性がありますが、レイアウト変更に制限がかかる場合もあります。
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造作譲渡
前テナントが設置した内装や設備(造作物)を、新テナントが引き継ぐこと。居抜き物件で多く見られ、造作譲渡料が発生する場合があります。クリニック開業の場合、医療用の特殊な設備や内装を安価に入手できる可能性がありますが、注意すべき点も多いです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「クリニック・医院開業の選択肢:居抜き物件と造作譲渡・事業譲渡について解説」
防火区画
火災の拡大を防ぐために設けられる区画。クリニックの規模や構造によって必要となる場合があります。
天井高
床面から天井面までの垂直方向の距離。クリニックでは、医療機器の設置や快適な診療環境の確保のために重要です。一般的に2.5m以上が望ましいとされますが、X線装置やCTスキャナーなどの大型医療機器を設置する場合は、より高い天井高が必要になることがあります。逆に、医療機器をあまり使わない場合など2.5m未満でも問題ないケースもあります
床耐荷重
床が安全に支えられる単位面積あたりの重量。クリニックでは、重量のある医療機器(MRIやCTスキャナーなど)を設置する場合に特に重要です。一般的なオフィスビルの床耐荷重は300~500kg/㎡程度ですが、大型医療機器を設置する場合はそれ以上の耐荷重が必要になることがあります。
電気容量
建物や部屋に供給可能な電力の最大値。クリニックでは、多数の医療機器や空調設備を同時に使用するため、十分な電気容量が必要です。容量不足の場合、増設工事が必要になる可能性があります。
空調設備
室内の温度、湿度、気流を制御する設備。クリニックでは、患者の快適性や医薬品の保管、医療機器の適切な動作のために重要です。特に手術室や検査室では、高度な空調管理が必要となる場合があります。
バリアフリー対応
高齢者や障害者が利用しやすいように配慮された設計や設備のこと。スロープ、手すり、車椅子対応のエレベーター、多目的トイレなどが含まれます。クリニックでは、患者の安全と利便性のために重要な要素です。
遮音性能
音の伝わりにくさを示す指標。クリニックでは、患者のプライバシー保護や静かな診療環境の確保のために重要です。壁や床、天井の構造や使用材料によって決まります。
採光・照明
自然光の取り入れ方や人工照明の設置状況。待合室や診察室での快適性、精密な診療や処置を行う際の視認性に影響します。
給排水設備
上水道や下水道の設備。手洗い設備の設置や医療機器の冷却、廃液の処理などに関わります。特に、歯科クリニックや透析クリニックなどでは、特殊な給排水設備が必要になることがあります。
建物管理会社
建物全体の維持管理を行う会社。主な業務には以下が含まれます
- 建物設備(空調、電気、給排水など)の保守点検と修理
- 清掃や警備
- 法定点検の実施
- 長期修繕計画の立案と実施
クリニック開業時には、建物の維持管理状況が診療環境に直接影響するため、建物管理会社の対応力や実績を確認することが重要です。特に、医療機関特有の要求(例:感染対策、医療廃棄物の取り扱いなど)への対応経験があるかどうかは重要なポイントとなります。
賃貸管理会社
物件所有者(オーナー)に代わって、賃貸借契約の管理や賃料の徴収、入退去の手続きなどを行う会社。主な業務には以下が含まれます
- 賃貸借契約の締結と更新
- 賃料の徴収と送金
- 入退去の立会いと手続き
- テナントからの問い合わせ対応
建物管理会社と賃貸管理会社
建物管理会社と賃貸管理会社は別々の会社である場合もあれば、同一の会社が両方の役割を担う場合もあります。クリニック開業時には、両者の役割と責任範囲を明確に理解しておきましょう。
契約関連用語
敷金・保証金
賃貸借契約時に、借主が貸主に預ける金銭であり、賃貸借契約が終了した際に返還されます。滞納家賃の支払いや修理費、原状回復費などにあてられることがあり、これらの金銭債務を担保するのが目的です。
敷金・保証金は同じ意味合いで使われていることが多いため、「家賃の支払いや修理費などを保証するために貸主に預けておくお金」と覚えておけばよいでしょう。
償却
敷金・保証金のうち、契約時に定めた額を貸主が収益として計上すること。例えば、償却について「解約時20%」の場合は、敷金・保証金のうち20%は解約時の返還対象になりません。
礼金
賃貸借契約時に借主が貸主に支払う一時金。返還されません。オーナーへの謝礼金としての意味合いがあります。
定期建物賃貸借契約(定期借家契約)
基本的には契約期間が満了すると更新されず、契約が終了する賃貸借契約。通常の賃貸借契約と比べて、貸主にとって有利な面があります。
普通建物賃貸借契約(普通借家契約)
期間の定めがあっても、契約期間満了時に正当な事由がない限り更新される賃貸借契約。借主保護の性格が強く、長期的な診療継続を前提とするクリニックには適していることが多いです。ただし、貸主との関係性や将来的な移転の可能性なども考慮して選択する必要があります。
原状回復義務
賃貸借契約終了時に、借主が物件を契約開始時の状態に戻す義務。クリニックの場合、特殊な内装や設備の撤去が必要になることがあります。契約時にしっかり確認しましょう。
フリーレント
契約開始後の一定期間、賃料の支払いが免除される契約条件。クリニック開業の場合、内装工事期間中の賃料免除などに適用されることがあります。開業準備期間中のコスト軽減に有効ですが、契約全体での総額で判断する必要があります。また、期間中も賃料以外の共益費・管理費は支払うことが一般的です。
管理費・共益費
建物全体の管理や共用部分の維持にかかる費用。管理費は主に人件費(管理人給与など)、共益費は主に設備費(エレベーター保守、共用部分の電気代など)に充てられますが、物件によっては区別せずに徴収されることもあります。クリニックの場合、医療廃棄物の処理や特殊な設備の維持管理などが含まれる可能性があるため、内訳を確認することが重要です。