美容医療市場は近年、急速に拡大を続けています。株式会社東京商工リサーチが2024年に実施した美容クリニック動向調査※によると、全国の主な美容クリニック248法人の2024年売上高は3,137億5,900万円と、前期比29.9%増の大幅な伸びを記録しました。
一方で、同調査では2024年の美容クリニックの休廃業・解散・倒産件数が過去10年で最多の7件に達したことも明らかになっています。市場が成長を続ける一方で、競争の激化やコスト負担の増大により、経営リスクも高まっているのが現状です。
このような背景を踏まえ、美容クリニックを新規開業したいと考える医師の間では、「居抜き物件」を活用したリスクを抑えた開業が注目されています。
美容医療業界は今、転換期
同調査によれば、美容医療市場はコロナ禍を経て安定した成長を続けています。SNSマーケティングの普及や自己投資意識の高まりにより、美容医療は幅広い層に受け入れられています。
しかし、2024年の業界では、倒産・休廃業が過去最多となり、撤退が目立つ状況も報告されています。背景には、以下の課題が指摘されています。
- 衣料資材や輸入設備のコスト上昇
- 好立地物件の家賃高騰
- 広告宣伝費の増加
- 価格競争の激化
このような要因から、売上は伸びていても利益率は低い・経営負担が増している、というクリニックも少なくないと思われます。
居抜き物件の活用が注目される理由
このような市場環境の中で、美容クリニック開業時のリスクを軽減する方法として、「居抜き物件」の活用が選択肢の一つになっています。
居抜き物件とは、前テナントが使用していた内装や設備が残った状態で借りることができる物件を指します。
美容クリニックの場合、撤退したクリニックの設備やレイアウトを引き継ぐことができれば、初期費用や開業準備期間を大幅に短縮することが可能です。
美容医療市場の成長と同時に、倒産や撤退も増えている現状から、居抜き物件が市場に出てくる機会が増えていると考えられます。ただし、条件に合う居抜きがタイミングよく出てくることは少ないのも現状です。
居抜き物件活用のメリット
- 初期費用を抑えられる
内装工事や設備投資を最小限に抑えられ場合があります。 - 開業までの期間が短くなる
既存の設備やレイアウトを活用できれば、スピーディーな開業が可能となります。 - 好立地の物件に出会える可能性もある
競争率の高いエリアでも、居抜き物件であれば比較的条件の良い物件を確保できることもあります。
居抜き物件活用時の注意点
一方で、居抜き物件の活用時にも確認すべきことがあります。居抜き物件の設備や内装は、必ずしもすべてのクリニックに適しているとは限りません。
- 設備の状態確認が必要
医療設備や内装の劣化状況を事前にしっかり確認し、追加の修繕や設備更新が必要かどうかを判断する必要があります。 - 賃貸契約条件の確認が重要
造作譲渡費の有無や原状回復義務の内容など、契約内容を事前に十分に確認することが重要です。 - 前テナントのイメージが残るリスク
良くも悪くも前テナントのイメージが残っている可能性があります。場合によっては、簡単なリニューアルを行い、新しいブランドイメージをしっかり打ち出す必要があります。 - 設備の適合性
美容クリニックで必要となる施術機器がすべて揃っているとは限りません。また、機器の譲渡はなく内装のみの場合も多いため、別途購入やリースも検討する必要があります。
居抜き物件で開業するためのポイント
美容クリニックの物件選びは、経営の安定に直結する重要なステップです。居抜き物件を活用する際には、以下のポイントを押さえておくと安心です。
- 美容クリニックやクリニック開業物件に詳しい不動産会社へ相談する
- 設備の状態や内装の安全性を、必ず専門業者に確認してもらう
- 開業スケジュールを事前に計画し、必要な修繕期間を確保する
まとめ
美容医療市場は引き続き拡大傾向にありますが、競争激化に伴い、撤退や倒産も増えています。居抜き物件を活用することで、初期費用を抑え、開業スピードを早めることができる可能性があります。ただし、設備状況や契約条件を慎重に確認し、自分の事業に適した物件であるかを見極めることが重要です。
美容クリニックの開業を検討している方は、現状の市場環境とリスクをしっかり把握しながら、自分に合った開業スタイルを選択しましょう。